また来年ね、っていう年中行事。


僕が働いていた麻雀店の常連は競馬もパチンコも好きだったが、身内でいろんなことを賭けていた。暇つぶしの手段を探し尽くしてもまだ足りないギャンブラーの対象は幅広い。相撲、野球は当然として、明日の天気までがそれになるという。そして今日もまた、丁半博打そのもののブックが行なわれたことは想像に難くないがそれは後半で。ちなみにブックメーカーのブックは賭け事の内容等を書く台帳から来ているそうで。


今日も今日とて体調が変わらず悪くて、何かを考えようとしても油の通っていない自転車のように異音が頭に混じる。仕事でコンテンツやコピーを書いていて、いつもならさらさら進むところでふいに止まってしまう。まるでたった一つの慣用句を使うのに毎度のように辞書を引いているようだ。こういうときは部屋の掃除がいい。でも、誕生日の日に何がしかの決意をする自分の年中行事のおかげで、そしてそれはだいたいが「部屋をきれいに保つ」という小学2年生がママにいわれてやるようなことであるおかげで、いまのところオフィスは死体安置所のように清潔だ。

仕事を終えて直帰する。道すがら思うのは、商用以外で誰にも会うことなく、街に繰り出すこともなく過ごしていると、街を客観的に見ることができるということ。ハロウィンというこじつけた理由など池袋には必要ない。昼間は勤め人が、夕方を過ぎればビルから吐き出された大量のこれまた勤め人と学生が居酒屋にカラオケにと吸い込まれる。そういう喧噪を間近で見ているだけの自分は何かから取り除かれた異物のように思える。


やれやれ、そう心の中で呟いて、僕は明日の予定をGoogleカレンダーで確認する。実はそんな必要がないくらいそれほど用事はないけれども、いつものように確認する。いまは花粉症と気温差アレルギーの季節の最中で、僕にとっても、もう何度目かもわからない季節だが、今年の池袋も誰もがそんな体調不良などどこ吹く風。いつもと同じスーツで、いつもと同じく連休イブイブの夜半を楽しんでいる。そして自分はというと、帰宅後は家内と何気ない話をしながらバラエティーを見た。

なんでこんな書き方をしているかというと、もちろん村上春樹はノーベル文学賞はまたお預けとなったから。

大学では近現代文学を専攻していて、村上作品は大学時代にゼミで取り上げられていたから、半ば強制されていくつかの作品を読んだ。主に短いものばかり。ノルウェイはまったく自分の頭に入ってこないシナリオだったけれど、彼が時代を切り取っていて、その中でチャンドラーの影響を強く受けていて、それを日本語であれまで表現できる作家がいたという発見の意味で学びにはなった。きっと自分の感受性は人に比べて鈍いのだろう。どうも頭のいい人が書く文章はすんなり頭に入って来ないし、誰かの書評も同じでイタリア語やスペイン語のように聞こえる。

こんなことをいったらハルキスト(誰がつけたんだろう、そしてそう呼ばれることを彼らはどう思うんだろう)にお叱りを受けるかもしれないが何度読んでも結末を忘れてしまう。その理由は自分の中ではしっくり来るものが見つかっていて、主人公に変化がないのだ。

やれやれ系主人公のさきがけである青年は、いくつかの出来事と出会いと別れを経て、結局最初の彼に戻っている気がする。小説の技法のイロハのイは主人公に何がしかの変化を起こすことだ。それがこの小説にはなかった(小説のいいところ。それは感想を好きに書いても、答えはないためになんとでもいえるところなので、これくらいの感想は許してほしい)。つまるところ自分に読解力がなかった。勧善懲悪、敵と味方、恋愛に失恋、勝った負けたの物語が好きなんでしょう。よく邦画になるような作家の単純な、少し謎のあるミステリー風味の物語とか。ちなみにチャンドラーの原作はミステリーとしては稚拙で、いろんなところに回収し忘れた伏線があったり、設定もほころびがあったりというのは有名な話。彼の価値は「ウィットに富んだ」というありきたりな表現を世に知らしめたはしりじゃないかというくらい「ウィットに富んだ」文体であり、また人物の心情の描き方なのだと思うのだけれどこの話はまたどこか別のところで。

ちなみに「ウィットに富んだ」という表現でググるといろんなものがでてきて面白いので、電車の中でヒマつぶしに検索してみてください。ボキャブラリーが増えるかもしれません。

閑話休題。学校の国語の試験などまるで意味のないものばかりで、「このときの作者の心情として近いものを選べ」みたいな4択(それも問題を作った教授の主観だらけの)を解くヒマがあれば好きな小説をもっと学生は読むべきである。さらにいえば、好きな小説を読み終えたら次に歴史の洗礼を受けた、古いものを読みあさるべきだ。読書は他人の人生を生きることに近しい(等しいといえるほど僕は人生に精通していないので近しいと書く)。


ずっと昔、僕の働いていた店の常連は、村上春樹の受賞となるかどうかでいつも賭け事をしていた。賭けていたのは次のビールを誰がおごるかとかそんなもの。一時の娯楽に供するものなので、笑って許してあげてほしい。どこのニュース番組を見てもやはり話題はノーベル賞なので、思ったことをつれづれなるままに。







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小林景悟

Author:小林景悟
RMUという競技プロ麻雀団体に所属しています。コピーライター、講師。

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